三詠子さんの独り言

還暦を過ぎて、次世代に自分の人生観を含め、何を伝えて来たのかと考えることが多々あります。

ファッションを生業にして29年目、常にアジィのファッションを身に着ける事で大人であると言う自負を持つ服を提案してきました。
子供の頃は、憧れを持つ大人が周りに沢山いました。
昭和の高度成長期の時代です。
大人たちは生きることも楽しむことも一生懸命でした。
子供と大人との境界線がはっきりしていました。
そんな時代に育った私の中には、ファッション業界程この境界線は強いと感じてました。

美しい物には手間や時間がかかります。
感性豊かな物は長い歴史が必要です。
デザインされ作り出された作品を身に着ける事は大人の特権です。
アジィが選び抜いた大人の女性の為の服。
次世代を担う若者に憧れや希望を持たせる事が出来るアジィでありたいと願ってお店を続けてきましたが、ここ10年ファストファッションの影響か、インポートセレクトショップが消えて行きました。
アジィも、今まで作り上げていたクオリティを落とさずに続けていく事が大きな課題になりました。

「カフェ・バールアジィ」を立ち上げ、新たなアジィとして出発しましたが、この大震災です。
今日本が抱える問題が、アジィにも大きくのしかかる事になりました。
次世代にアジィはいったい何を伝えたら良いのか・・・。
嬉しい出来事がありました。
アジィのお客様のお嬢さんが、ファッション業界で仕事をする為のパターンの勉強に、9月1日パリへ旅立ちました。
彼女は桐朋女子出身で、デザイナーをめざし、専門学校を出て業界に就職して4年。
今の日本のファッション業界においての自分の限界に、パターンを勉強しようとパリへの留学を決意したようです。

桐朋学園の通学道路にあるアジィが、彼女の生き方に影響出来たのではないかと、私なりに自負してます・・・だったら良いな~~~!
来年のパリ行きに又一つ目的が出来ました。
彼女に会います。待っててね!

三詠子さんの独り言

イタリア映画祭が4月29日から5月4日まで、有楽町朝日ホールで行われていました。
アジィの休みと重なった2日(火)イタリアのファッションを見たくて出かけてきました。
女性監督ロベルタ・トッレの「キスを叶えて」を観ました。
奇跡を起こしたと聖人に祭り上げられた少女を取り巻く、家族や周りの人々の喜劇です。
女性の監督なので、映画の中のファッションに期待をしたのですが、やはりイタリア。
女の子からおばあさんまで、みんな胸を大きく開けておんなおんなのファッションです。
主人公の母親はつねに肉感的な身体を強調させるピタピタのワンピースを着ています。
やはりイタリア映画においては、男が男であって、女が女である事が大前提のように表現されている印象があります。
今回の映画も、永い夫婦生活においても常に男と女であり、主人公の女の部分を、胸元が大きく開いたぴたぴたのドレスを着せての表現の仕方は、野暮ったさを感じさせられました。
映画としては、私の若かりし頃のヴィスコンティ監督やフェリーニ監督の映画を夢中になって観ていた作品の印象が強い為かあまり面白くなかったです。
服装によって女を表現する施行があまりにも単純で、これもイタリア映画がなす技なのかなと、すこし失望しました。
女性の監督であればもう少し女性の表現を単純化させてはいけないのではないかなと思うイタリア映画祭の感想でした。